岸田秀は『ものぐさ精神分析』において、「「自己嫌悪とは、つまり、「架空の自分」が「現実の自分」を嫌悪している状態である。」、「自己嫌悪は、その社会的承認と自尊心が「架空の自分」にもとづいている者にのみ起こる現象である。」と述べている。
私は、自己嫌悪とは、自分が行った嫌悪する行為を客観化できない結果、そのような行為を繰り返してしまい悩んでいる人が、その自分を嫌うことにより、本当の自分(これが岸田の言う「架空の自分」か)は、その自分とは違っていると思おうとする心理だと思っている。
これは自己嫌悪に限らない心理で、肉親や他人を嫌悪する場合にも言えることだ。近親憎悪はその典型だ。自分と似ていると感じることを否定するために「嫌う」のだ。嫌悪することにより、その他者と自分は違うと思おうとするのだ。自己嫌悪する人は似ている他者をも「嫌う」。
岸田の言は、そのような心理に陥る人が「架空の自分」にもとづいているということなのだろうか?