「家族」と「内密出産」上
最初のテーマとして、「家族」と「内密出産」について考えてみましょう。
「家族」とは誰にも当たり前のようですが、これについては考えれば考えるほど不明確な概念であることが分かります。
「家族」については私が若い時からずっと考えてきたことですが、最近、このことについて考えたきっかけは、「内密出産」あるいは「匿名出産」という出来事が話題になったからです。
「内密出産」はフランスでは200年以上前から、また現在では、ドイツ等、欧米の多くの国で認められており(参照・2019年3月・厚生労働省「妊娠を他者に知られたくない女性に対する 海外の法・制度に関する調査研究 報告書」)ます。しかし日本国内では認められていないため、一部の国会議員が議員立法を目指していますが、保守層からは捨て子助長論等の反対論が多いとのこと。その人たちは、捨てさせなければ解決すると思っているのでしょうか。孤立出産をせざるを得ず、生まれた子を殺すという痛ましい事件が後を絶たないのはこのような社会的圧力が原因なのではないでしょうか。
こういった懸念を解消するためにも、感情的な議論にならないようにするためにも、それらの国の状況を調べたり、専門家の見解を聴き、問題点等を明確にする必要があるでしょう。
また、与党から「伝統的な家族観を壊す」という批判が根強いため実現困難とのこと。「伝統的な家族観を壊す」ということが「内密出産」を認められない理由になるのでしょうか。超党派の生殖補助医療議員連盟がこの問題に取り組んでいるようですが、この論理について議論したのでしょうか。まずそのような主張をする人に、「伝統的な家族観」とは何か、そしてそれが壊れないようにすることにどのような意義があるのか、ということを明確に説明させる必要があると思います。
(中へ続く)