書評 精読 アレント『人間の条件』 著/牧野雅彦

 (アレントはアーレントとされている著書が多いが、ここではこの著者の表記を使用します)

この著書は、アレントの『人間の条件』の訳者による解説本だ。

まず、著者は『人間の条件』について、「近代に始まる自然科学と技術の発展は、ついにそうした自然的条件をも克服するかに見えるところまで来ている。それをもたらした人間の能力とは、いったいどのようなものなのか。それが人間と、そして人間をとり巻く自然にもたらすものは何なのか。これらの問題にマルクスとは違った展望を見出そうとすることーこれが『人間の条件』を貫く主題である。」と述べている。 果たして、アレントはどんな展望を見出したのだろうと期待しながら読み進めてみた。

この著者は、マルクスの著書等を独自に引用しながら、『人間の条件』を解説している。しかし、アレントの言説の解説の範囲内の著述を出ていない。解説しながら疑問になったり、批判したくなったりしなかったのだろうかという思いを抱きながら読んだが、著者が述べた展望をどこに見出せばいいのかわからなかった。

 あまり意味のない購読だったが、あとがきに、『人間の条件』ではニーチェ批判が完結していないこと、それはアレントがニーチェに親近感をもっていたこと、師であったハイデガーのニーチェ評価にも原因があったことが述べられていたことは参考になりそうだ