私は、数多くの著書でルソーの評価について読んでいたが、ルソーの著作そのものを読む機会がなかったので、この本で「入門」しようと思った。
この本は、ルソーの人柄の意外性から語られ始める。これはその後のルソーの言動にも関係することになるので、導入部として興味深く読んだ。そして、ヒュームが、ルソーがこの著書で展開した「社会契約説」に、「あなたはいつ社会契約をしましたか?」「人類の歴史において、契約によって国家が作られた実例なんてありましたか?」という「非常に鋭い批判」をしたというエピソードが語られている。これは、私が以前から抱いていた疑問と同じなので、この後の著述が楽しみになった。
宇野氏は、有名な「社会契約説」が当時、あまり評価されていなかったが、敗戦後の日本で、「近代そのものだ!」と評価されたが、「それは、世界的に見てもかなり特殊で興味深い現象でした。」という。
その後、『社会契約説』そのものの解説がされているが、有名な「一般意思」の解説を含め、宇野氏は、ルソーは人間の理想を提唱していながら、実際には実現不可能と自ら述べているとし、要するにルソーは批判精神には優れているが、夢想家にすぎないと言っているようである。しかし、宇野氏は最後に、リベラリズムが見放されそうな現在こそ、ルソーのラディカルな思想が求められているとし、「ルソーを読んで、この時代と闘いましょう。」と呼びかけている。