高市首相の「台湾有事」の際の日本の「存立危機」発言問題・論考         この問題を国際情勢について国民全体で考える糸口にしよう!

  高市首相の、「台湾有事」が日本の「存立危機」事態になりうるという発言に対し、中国の報復措置が続々と発表されているが、なぜ中国がこのように反省を迫るのかを、自民党政府は理解できていないのではないだろうか。その一因は、短絡的に結論した中途半端な国会での質疑にある。それには、立憲民主党の岡田議員の責任もある。

2026年1月4日の信濃毎日新聞に、その質疑の際、暗黙のうちに想定されていたと思われる「台湾有事」の際のシミュレーションが掲載されたので、その内容を見ながら具体的に考えてみよう。

ポイントは、中国による台湾の「海上封鎖を国際法違反とみなした米軍は横須賀基地(神奈川県横須賀市)を拠点とする第7艦隊を周辺海域に派遣。海上封鎖を解く活動をはじめたところ中国艦隊と軍事衝突が発生した。米中の外交当局間では収束せず、交戦状態に陥った。」というシミュレーションがまず前提になっていることだ。この記事のタイトルが、「「存立危機」米軍事介入が鍵」とされているように、日本が単独で軍事介入するつもりがないのなら、その想定を前提にしなければ、日本の「存立危機」、つまり中国との戦争にはならないことになるので順当な言説だろう。

岡田氏は質疑の中で、まずこの点を明確に確認するべきだった。存立危機事態になりうるのは、日本の単独軍事介入が前提かどうかと。首相はこれには、さすがにNOと答えるだろう。そうすると、米軍の軍事介入を前提にしているのかという問いを岡田氏は続ければいい。これに高市氏はYESと言えるだろうか。おそらくそうは答えられないだろうし、最近の米国の「世界の警察ではない」と言明する態度を見ていると、口先介入はしてもこの問題に軍事介入するとは思えないというのが一般的な認識だと思うからだ。

まず、第2次世界大戦後の米国の台湾政策がご都合主義的でしかないことを認識してほしい。中華民国政府が台湾に避難した際、当時のトルーマン大統領は軍事援助をしないとしたが、翌年、朝鮮戦争が勃発すると共産主義の拡大を防止するため軍事援助を再開し、相互防衛条約を結んだ。しかし、ソ連との対抗のため1979年には中国(中華人民共和国)と国交を回復する方針に転換をしたため、台湾との関係は弱体化した。それでも、米国は*「台湾関係法」を制定し、武器売却をしながらあいまいな関係を続けて、現在に至っている。この経過を追えば、米国は両地域と現在の関係を続けたいのだが、台湾への中国の軍事攻撃があった場合、台湾側について軍事介入することにより失うメリットのほうが大きいという判断をするだろう。その際、あわよくば、日本や韓国が代役を務めてくれることを期待しているため、しきりに両国に危機を煽り、軍備を増強するように圧力をかけている。

トランプにたしなめられるという漫画

高市首相はその米国(トランプ大統領)のその欺瞞的なスタンスを考慮せず、本音を忖度して、うっかりあの発言をしてしまったというのがこの件の有様だ。中国の怒りをかった態度をトランプ大統領にたしなめられるという出来事は、日本人にとって屈辱的な漫画でしかない。こんな人が首相になってしまう日本の民度が嘆かわしい(もっとも、米国をはじめとする世界各国も同様な状況だが)。高市内閣の支持率が依然高いということは、このような体たらくを理解できないのだろうか。この問題は単なる国会質疑の失言では済まなくなっている。 

それはともかく発言問題に戻ると、「存立危機事態」は起こりえないことになる。国会での質疑は表面上、無事終了してしまう。しかし、それでは自民党政府が「台湾有事の際の沖縄先島諸島民の避難計画、シェルター整備、自衛隊基地の配備などについて、計画を進めている理由がなくなってしまうので、立憲民主党はそこでその矛盾を追求すれば、現在の危機的な国際情勢を国民全体で考える糸口が開ける。日本は米国からどのような働きかけがあっても台湾有事に介入しなければ、上記の計画等を止めることができる。

もし米国が台湾有事に参戦するということがあったとしても、日本に米軍基地がなく、日米安全保障条約があっても日本に参戦義務がなければ米中間の問題だ。この際これらも問題を根底的に検討するべきだろう。現在、米国は世界中で最も横暴で危険な国家である。その米国との「安全保障条約」を結び、相互性を強くすることは、「安全」よりも「危機」を選んでいることになるのではないだろうか。

*台湾関係法(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E9%96%A2%E4%BF%82%E6%B3%95