書評 ルポ国威発揚 著/辻田真佐憲

    この本は、書名のとおり、著者が日本国内や海外の「国威発揚」的プロパガンダを象徴する石碑や記念館をめぐった「ルポ」である。

最初にルポはトランプタワーの訪問記で、トランプグッズがびっしりと並んでいた土産店の様子などのあと、筆者は、「トランプという人物は、いわば壮大な「ネタ」である」、とし、「かつての指導者は、すべてを見通す天才として演出されていた。そのため茶かすことでその権威を引き剝がすことができた。今日はちがう。ネタとして面白がられているうちはどんな批判も無効化してしまう、じつに厄介な存在なのである。」、と述べ、これが現代の高度な消費社会やSNSで駆動される資本主義が支える「個人崇拝」の原動力になるかもしれないと懸念し、日本の政治家にも影響がありそうなことを感じるという。これを「国威発揚」と捉えるべきかどうかは疑問だが、現代の「個人崇拝」分析としては面白い。

別の章でそんな米国においては星条旗が愛されている様子も語られ、星条旗は「現在にいたるまで米国で「われわれ」という国民意識を創出するための重要な装置」になっていて、「米国では、現在進行形で「われわれ」が創造されている。」としながら、国民国家とナショナリズムのプロパガンダ、国威発揚との関係への見解を述べようとするが、国民国家やナショナリズムについての理解が不十分なのであいまいな結論しか出せないのは歯がゆい。

ただ、パリ五輪の開会式で、サーフィン競技会場としてタヒチの映像を上映したフランスの植民地主義的国威発揚とヨーロッパ中心主義が現在も無反省で誇られていることを指摘していることは評価したい。